【Three Primaries】Vol. 22 シンガーソングライター・真琴ルーパーシンガー 奏メイナ さん

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【THREE PRIMARIES】VOL. 22 シンガーソングライター・真琴ルーパーシンガー 奏メイナ さん

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「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第22回は、世界各国でパフォーマンスを重ねているシンガーソングライターで真琴ルーパーシンガー 奏メイナさんです。

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奏メイナの「心」:

「表現したい」それを可能にした歌と、詩と、真琴との出会い



実は、当初音楽の道を志すつもりはありませんでした。自分は歌が下手だと思っていたからです。でも「表現する人になって作品を残したい」という想いは漠然と抱いていました。注目を浴びるとスイッチが入るタイプで、学校の廊下でパフォーマンスしたり、人前で何かを表現することには快感を感じていたんです。

学生時代に演劇部に入ったのですが、頂いた台本に歌うシーンがあった時が転機でした。沢山の拍手を頂けたことに衝撃を受け、音楽という選択肢が浮かびあがります。さらに、演劇的な要素もあり、もともと好きだった「文章を書く」という要素もあるシンガーソングライターの存在を知り、「これだ!」と感じたんです。

ただし、シンガーソングライターとしてやっていくには楽曲を奏でる楽器が必要です。コンピューターで自作していたこともありましたが、当時、歌と楽器を同時にやるのはとてもむずかしくて。そんなときにある音楽家の方と出会い、彼女の奏でるピアノの音色を聞いて、一瞬で惚れ込みました。

すぐに彼女をスカウトし、ユニットのような形で活動しはじめました。不思議なくらい息がピッタリで、仕事依頼も増え評判も上々でした。でも、音楽に向き合うことを何よりも大切にしていた彼女と対照的に、当時の私は業界の荒波に揉まれて音楽自体に向き合うことができなくなっていて……。結果的に彼女とは一度離れることになりました。

そうしてまた独りになったタイミングで、運命的に出会ったのが「真琴」です。友人に紹介されて遊びに行った展示会で、初めて音色を聴きました。真琴はたった1人の日本人女性が創作されているヒーリング和楽器です。倍音が多く、いろいろな音同士がつながっているかのようで、「これは私の声と似ているから相性が良いかもしれない!」と感じて購入を決めました。

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奏メイナの「技」:

追い込まれた状況で、スポンジのようにすべてを吸収する



珍しい楽器故に、弾き語りで歌ってる人もいなければ先生がいるわけでも無かったので、どう弾いたらいいかわからず、考えた末にとった方法がストリートライブでした。お客さんはパフォーマンスが良ければ笑顔になってくれるし、イマイチであれば去っていくはずなので、それを指標にしようと思ったんです。さらに自分を追い込むために、人前で演奏しないと帰れないというルールでプチ旅行を計画し、住んでいた東京を離れて大阪の路上でやることにしました。

実際、珍しさもあってかなりの人数が集まりました。でも日本の方は優しさから最後まで聞いてくれるものの、海外の方はみんな開始1分で去っていってしまったんです。心が折れるような経験でしたが、私が求めていたのはまさにその正直な反応。ダメなら言ってほしいし、それがあるからこそ試行錯誤ができるわけです。この経験から、約2年半の間、路上ライブをしながら19ヶ国を巡る修行の旅がはじまります。

旅に出るにあたっては家を引き払い、所持金もごくわずかとしました。言い訳ばかりして挑戦していなかった自分を、逃げられない状況に追い込んだんです。さらに、最初の国に着いてすぐ高熱を出して歌えなくなるというアクシデントも重なり、「もう真琴しかない」ととにかく一生懸命練習しました。

さまざまな国でパフォーマンスをして感じたのは、国ごとに聞き方も喜び方も違うということ。ニューヨークでは上手くて当たり前だからこそ個性が重視されますし、日本の曲の人気が高い台湾では、日本の曲を日本人が歌うというだけでチップをいただける場面もありました。そういった違いに触れることで、「当たり前」を壊すことができたのが気持ちよかったです。同じ場所で同じことを繰り返していると感覚が麻痺してしまいますが、旅はその麻痺を取り除いてくれます。日本の当たり前は海外の不思議であり、その場に行って人と会って会話しなければ、リアルを体験することはできないんです。

そのときの私はユニットも休止するし、業界のごたごたに巻き込まれて苦しい時期だったからこそ、新しい経験を求める気持ちも、それらを吸収できる余地もたっぷりある状態でした。もし今苦しみを感じている方がいたら、それはむしろチャンスかもしれません。

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奏メイナの「体」:

自分の魂と音楽、そしてお客さんの笑顔がつながる瞬間を求めて



海外のリアルを体感した上で思ったのは、「得た感覚を元に音楽と向き合いたい」ということです。どんなパフォーマンスをするとどんな反応をもらえるかわかったので、コロナ禍で在宅を余儀なくされている間はアレンジの研究をしていました。

ループマシンを追及しようと思ったのもそのタイミングです。真琴と同時期に購入したものの、使いこなせていなかったんです。研究すること約2年、とあるお仕事で披露したところ、以前と比べ物にならないくらいの反響をいただきました。

ミックスやレコーディングについても勉強し、音を残すためにミュージックビデオをつくってYouTubeにアップしたりもしてきました。そうやってスキルを磨き、旅の中での気づきや体験を盛り込んだパフォーマンスにいただいた大きな反響は、芋づる式にさまざまなライブの依頼へと繋がっていきました。世界一周するピースボートでのお仕事もそのうちのひとつです。

船内ミュージャンとして約4ヶ月間、ほぼ毎日歌わせて頂いたのですがとても貴重な経験でした。何よりも記憶に残っているのは「お客様と一緒にステージを作り上げていった」ことです。コロナ後初の航海だったので沢山トラブルがあったのですが、なんとかしようと頑張っていたら、徐々にお客さんが助けてくれるようになっていったんです。毎日聴きに来て「応援してるよ」と差し入れを下さったり、一緒に改善方法を考えて下さったり。みんなが会場の後ろで大きな丸を腕でつくってくれたときには、涙がこぼれました。

また、海外バンドの伴奏で歌ったのも初めての経験でした。全て英語でやり取りをして毎日みんなで練習して、一緒に音楽を作っていく喜びを知りました。徐々に船内での口コミも広がり、結果的にパフォーマンスに大きな反響をいただきました。

そんなピースボートの旅を通して、またいろいろなことが見えてきました。船を降りたらお客さんやバンドメンバーと離れ離れになることに、強烈な寂しさを覚えたんです。こんなにも強く繋がれたのに…。1人で旅をして歌ってる時には無かった、初めての感覚でした。

これからは人と繋がり「続け」たいと真剣に思いました。そのためにはSNSやインターネットなどで継続的にコミュニケーションすることが大切なのではないかと気づいたのも大きな収穫でした。

そもそも私が幸せを感じるのは、自分の魂、気持ちの良い音楽、そしてお客さんの笑顔の3つが揃ったとき。ひとりで試行錯誤している頃は自分の魂だけだったのが、楽器を持って海外を巡る経験を経て音楽と向き合えるようになり、第3期とも言える現在はお客さんも含めてさまざまな方とつながりながら一緒に何かをつくりたいと思っているところです。この3つを満たすということは、つまり「成長しつづける」ということなのかもしれません。

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奏メイナにとって、「パフォーマンス」とは?



音楽というパフォーマンスは「会話」と似ていると思います。言葉を発して、音を発して、相手の表情を見て、感情を受け止めて。そこで起こるコミュニケーションによって自分と相手とがつながる感覚がとても好きです。音楽を手段として周囲とつながっているんです。

パフォーマンスは、決して特別なものではないと思います。文書を書く、インタビューをする、どれもがパフォーマンスですし、どれもが相手とのキャッチボールによって成り立っています。異質な歴史を持つ者同士が溶け合ってつながる、そのための奇跡的な瞬間なのだと思います。

私自身はステージに立つとき、お客さんが一人だろうと何万人だろうと「全員抱いてやる」という気持ちでいます。両手が大きく広がってすべてをぎゅっと抱きかかえているような、ビッグハグのような感覚。身体も感覚もみんな溶け合って、深い心の部分で会話しながらつながる、それがパフォーマンスなのではないでしょうか。


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インタビュアーコメント

自分で自分を追い込むことでさまざまな経験を掴みとり、そこで起きることから貪欲に吸収することで、活躍の場を広げてきた奏メイナさん。歌を通してお客さんとつながる彼女のパフォーマンスに、ぜひ包み込まれてみませんか? 奏メイナさんへのご依頼をお待ちしています!

(Interview&Text:Shiho Nagashima

奏メイナ Tint Room

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■MV 「So Good」 撮影の様子はこちら

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