【Three Primaries】Vol.11 こまたん さん

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【THREE PRIMARIES】VOL.11 独楽パフォマー こまたん さん

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「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第11回は、独楽(コマ)パフォーマー・こまたんさんにお話をうかがいました。

こまたんの「心」:

自分が満足できることを一番大切にする



何を思ったのか、高校を辞めて海外に行ったんですよ。その前からよく独りで海外旅行をしていて、たくさんの旅する人を見て「どこでも行けるじゃん、じゃあ俺も行こう」と思っていて。海外で出会う人は皆面白かったですね。大道芸をやりはじめたのも、旅先でのある日本人との出会いがきっかけ。彼と話していて「俺、コマ回せます」と言ったら、「じゃあやればいいじゃん」と言われたところからなんです。

その後、ちゃんとコマをやり始めるのは半年後。一番最初に路上でコマを回してお金が入ったのは、マレーシアにいた時です。何もしゃべらずにひたすらコマを回していたんで、投げ銭が入った時はびっくりしました…!自分のパフォーマンスのどこにそのお金を出してくれたのか、まったく意味が分からなくて。全部その日のうちに飲みに使いましけどね(笑)。

実は最初の頃はパフォーマンスするのが大っ嫌いで、人前に立つのも嫌だったんです。小学生の頃に大道芸をやった時の経験から、「自分は将来、絶対にパフォーマーにはならない」と思っていたぐらい。なのになんでパフォーマンスをやろうと思ったのか、自分でも未だによくわかりません。

そうしてなぜかパフォーマーになったんですが、全然ダメで。「ここでパフォーマンスをしよう!」と思っても、動けずに5時間くらいその場に立ち続け、そのまま暗くなって家に帰ってゲロを吐く…というのを1年ぐらいやってました。その頃は「パフォーマンスはお客さんを楽しませるもの」と思い込んでいましたね。でも人のためにやっていると、やっぱり自分が潰れるじゃないですか。それでダメになってしまって。

パフォーマンスが出来るようになったのは、ある人に真逆の考え方を教えてもらってから。曰く「お客さんは被害者だ」と。出来るだけ嫌われるように、納得してもらわないように、何も理解させないように、自分のためだけにやる。そうして自分が満足できるショーをやりだしたら、変わったんです…!「お客さんのために」と無理やり体を動かしていた時の何倍ものお客さんが、見てくれるようになりました。当時はお客さんの集まりが悪いと一回解散させたりしてました(笑)。今はさすがにそこまで尖ってはいませんが、根底にはこの考え方があります。

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こまたんの「技」:

技術とパフォーマンスは別物。コマに固執せず、「パフォーマンスのプロ」を目指す



パフォーマンスっていくら続けても、自分の技術があがるわけじゃないんです。パフォーマンスが上手くなって、人を集めてお金を稼げるようになっても、やっていることは基本同じでコマの技術は何も変わらない。俺は人前で失敗するのは恥ずかしいので、絶対に成功するもので組むんです。でもそれは100%の実力の中の30%の技術だから、続けていても「100%」があがっていくわけじゃない。じゃあ残りの70%はというと、趣味・娯楽なんです。

ただし、その考えは日本に帰ってきて少し変わりましたね。海外では言葉も通じないしコマも知らないから、何をやっているのかそもそも理解されない。だから、ダンスの振付を作るような感覚でパフォーマンスを組んでいました。でも日本では言葉も通じるし、技が難しいことも分かってもらえるから、いろいろ出来る。実際、残りの70%をパフォーマンスに取り入れ始めていて、色々なスタイルのパフォーマンスが出来るようになりました。まったくしゃべらずに音楽から照明まで全部決めきった10分のステージをやったり、お客さんと対話しながら30分やったり。最初は緊張するけど、やってると「楽しい」が勝ちますね。パフォーマンスが大嫌いだった頃から考えると、凄い変化ですよ!

コマに関しては、技術的に凄い人はたくさんいるけど、パフォーマンスをやってる人がいないんです。最近の流行りとしては、ジャグリング等でもゆったりした動きでちょっと不思議に見えるようなものが増えてきています。でも俺はちょっと古臭くて、いっぱい投げるのが正義、早く投げるのが正義、というのが好き。

ただ、コマしかやらない人間ですけど、「コマ回しのプロ」になったわけじゃない。自分勝手にやろうと決めた時も、「パフォーマンスのプロ」になろうと思ったわけで、コマはたまたま使っているだけ。コマにこだわりはないと言っても誰も信じてくれないんですが、パフォーマンスとコマとは全く別物だと考えています。2年後ぐらいにはコマなんて回していないかも(笑)。パフォーマンスはパフォーマンスで、それはそれで自分のやりたいことになったんです。

やっぱり俺は「パフォーマンス」を見たいんですよね。単純に面白いかどうか、「ああ、すげえ!」というものかどうか。技術はあるに越したことはないけど、技術とパフォーマンスは別物。そういう意味では、パフォーマー全員同業者ですね。技術的にいうと同業者はコマの人だけですが、パフォーマーの同業者はミュージシャンから画家まで全員になっちゃいますね(笑)。

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こまたんの「体」:

日本でパフォーマーとして生きていく



パフォーマンスしても99%の確率で、「もっとこうすればよかった」と思います。自分が納得して、お客さんが盛り上がって、投げ銭が入る。この3つが全て揃ったことはほぼ無いですね。自分は楽しくてもお客さんの反応はイマイチだったり、上手く伝わっていなかったり。技は失敗したけどずっと見てもらえて投げ銭も入った、という場合も、やっぱり技を失敗したところで自分としては納得できないんですよね。

もし全部揃ったら引退するんじゃないですかね。ずっと納得していないから、ずっとストレスもあるけど、原動力にもなる。やっぱり楽しいし、次もやりたくなりますね。楽しくなかったとしても、「あーーー!」となって、結局またやるんですけど(笑)。

実は今月、公演が22日もあるんです…!久しぶりのパフォーマンスで、やってみたい技や曲がかなりあるので、1カ月間で新しく「コレ!」というものを作れたらいいな。大道芸だと「ちょっと挑戦してみようかな」が許されるから、先ほどの「70%」の中のものを試すことも出来るし楽しみです。拠点を作り、旅人ではなくパフォーマーとして腰を据えて生きていくために日本に帰ってきたので、いろいろやりたいんです。

日本でパフォーマンスをしはじめてハッとしたのは、「大道芸人にファンがいる」こと。それまでは国をまたいで転々としていたから、1か所に長く留まることがありませんでした。その時その場所で仲良くなることはあっても、次も見に来るよっていうことはない。そもそも俺、海外で活動している時、名前も名乗らずやっていたんです(笑)。

だから日本に帰ってきて、大道芸人にファンがいることも、大道芸を好きな人が沢山いることも衝撃的でした。大道芸ってあくまでも、「その時その場に居合わせた人が足を止めて見てくれたらいいな」というもの。だから告知をするという概念もなかったんです。でも日本だと、言えば来てくれる人がいる。日本と海外の違いというよりも、国を転々としている俺のスタイルが特殊だったから、「見に来てね」が出来るのは面白いですね。

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こまたんにとって、「パフォーマンス」とは?



ものすごく周りを巻き込む自己満足。お客さんは被害者です。未だによくわからないけど、「頑張って人楽しませるのがパフォーマーだ」と思ってやっていた頃は独りでゲロを吐くほどだったのに、「俺は自己満足でやる」と切り替えてから色々な人が見てくれるようになりました。今でも、上手くいかなかったパフォーマンスを振り返ると、ちょっとお客さんに寄りすぎていたり、自分がやりたくないことをやっていたなと思うんです。そういう時は、「もっと自分勝手に」と考え直してみるようにしています。

自分の考え方の変化には、3つの期間があります。「パフォーマンスなんて無理」という時期から「俺は俺だ」という時期を経て、今は「自分が一番だけど、二番目にはお客さんがいて、お客さんも楽しんでくれたら最高」。もちろん考え方は変わっていくから、数年後にはまた違うパフォーマンスをやっているかもしれないですけどね。


インタビュアーコメント

インタビュー中、実は「こま担当」が名前の由来であることを教えてくれたこまたんさん。「人のため」では上手くいかず、「自分勝手にやる」ことでそのスタイルを確立できたことによって、彼ならではのお客さんとの距離感を掴み始めているように感じます。オンライン発表会の動画からも、実はそんなこまたんさんらしさが滲み出ています。是非チェックしてみてくださいね。

(Interview&Text:Shiho Nagashima



こまたん Tint Room

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