【Three Primaries】Vol.18 レインボースプリングパフォーマー ささまん さん

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【THREE PRIMARIES】VOL.18 レインボースプリングパフォーマー ささまん さん

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「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第18回は、レインボースプリングパフォーマーのささまんさんです。

ささまんの「心」:

笑顔と直接触れあえる仕事を求めて、サラリーマンからパフォーマーに転身



パフォーマンスとの出会いは高校生のとき。友達を驚かせようとカードマジックを披露したのがはじまりです。サッカー部で足は使っていたので、余っていている手を使うことをやりたかった株式会社んですよね(笑)。タネを知っていれば何てことないのに「すごい!」と言ってもらえたのが嬉しくて、ネットの動画や本を見てどんどんやり方を覚えていきました。

でもこれが仕事になるなんて当時思ってもいなかったので、卒業後は電力関係の会社に就職し、地元の北陸圏内で何度か転勤しながら技師として働いていました。しばらくマジックを披露する場もなく、練習もしていなかったんですが、最初に転勤した石川でたまたま寄ったたこ焼き屋のおじさんがなんと元マジシャンの方で。技を見せたら「そんなのマジックなんて言わないよ」と言われてしまい、それならばと教えてもらうことにしたんです。

それがきっかけで、再びマジックをやり始めました。あのときたこ焼き屋さんに入ったのは、運命だったと思います。

その後転勤した富山で参加したマジックサークルの練習会で、もう一人のパフォーマンスの師匠に出会いました。そのサークルは月に1回マジック好きな老若男女が30人ほど集まり、1ネタ披露するのがルール。プロとして活躍している方もいて、「北陸でマジックだけで食べていけるんだ」とかなり衝撃を受けました

ただ本業の仕事も楽しかったので、この時点ではまだパフォーマンスを仕事にすることは考えていなかったんです。転機となったのは直属の上司の不幸。毎日顔を合わせていた人がいなくなってしまうのは辛かったし、そうやって誰かがいなくなっても何事もなかったかのように回っていく会社を眺めて「仕事って何なんだろう」と漠然と思うようになりました。また、お客さんの顔が全く見えない社内向けの業務が中心だったこともあり、「自分は一体誰のために仕事をしているんだろう」とも感じるようになりました。

そんな中、サークルで出会った師匠のステージの手伝いをするようになり、パフォーマンスならお客さんの笑顔をつくることができるし、その反応に直接触れることができると気づいたんです。そんな、10年以上仕事で得られていなかった部分にすごく魅力を感じました。師匠に相談したら、ひとりは「成功できるのなんて一握りだから絶対に辞めろ」、もうひとりは「やってみたらいいんじゃない?」と反応は正反対。それでも、この世界に飛び込んでみたい思いのほうが強くなり、11年務めた会社を辞めてパフォーマーとして挑戦することに決めました。

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ささまんの「技」:

ちょっと試して、反応をみて試行して、積み上げていく



レインボースプリングを使い始めたのは、会社を辞めて1年経った頃。プロがたくさんいて世界一になるハードルの高いジャグリングやマジックではなく、「ささまんといえば〇〇」と言えるものが欲しいと思って始めたのがきっかけです。

とはいえレインボースプリングを選んだのは、正直「なんとなく」でした。おもしろそうだからと遊んでいるうちに、やっている人が誰もいないことに気づいたんです。毎日SNSで検索していても全く引っかからない。それなら、ということでレインボースプリングを使うことに決めました。

レインボースプリングの気に入っている点は、技から技へと繋がっていくところ。いろいろな技を連続して見せる流れや組み合わせ自体が、また別の技になっていくのがおもしろいなと感じています。技をつくるときは他の分野の要素を反映することも多く、これはマジックの経験が活きている部分でもあります。他の道具で技を綺麗に見せる方法があれば、それをレインボースプリングに持ち込んでみるなど試行錯誤しています。

実はそこまでの1年目はいいペースで仕事が来ていたんですが、2年目にはコロナ禍で仕事ゼロの状態になってしまい、何とかしなければとSNSでの発信を始めました。

まずやったのは、ライブ配信アプリでマジックや大道芸をしている人を毎日チェックすること。でも、あまりおもしろいと思えるものがなかったんです。それで、実験的に毎日トークだけするライブ配信を始めました。そこで人間性を知ってもらえたことで徐々に「パフォーマンスが見たい!」とコメントをもらえるようになり、今度はYouTubeにパフォーマンス動画を投稿し始めました。

そうやってライブ配信とYouTubeへの動画投稿を毎日やり続けていたら、ファンの方が両方を行き来するコミュニティのようになってきたんです。おもしろい世界ができてきたので、もっとSNSをやろうとTikTokにも投稿を始めました。

TikTokも最初は全く伸びませんでした。1日1つ技をつくって動画をあげていたけど、再生回数は右肩下がりでとうとう「70」になってしまって…。でもそこで完全に考えが切り替わりました。おもしろ系の動画にシフトし、タイトルのつけ方や投稿の仕方などのSNS戦略を学び、他の人の動画の再生回数を分析してそれを反映するようにしていったんです。

正直、それはもう僕のやりたいこととは無関係な世界です。「踊ってみた動画」に再生回数で負けるなんて、はじめは辛くて「もう無理だ」と思ったし、今でも何がおもしろいのかわかりません。でもそれではダメなんだなと。

そのため、今はまずかっこいいパフォーマンスはYouTube、人間性はTikTokと、メディアによって色を変えたらどうなるか実験しています。客層に合わせてタイトルを変えるだけでなく、分析結果から「こう煽ったら、常連のファンの方からこういう返しが来て全体が盛り上がる」と予測してコメントを投稿するようにしています。もともとイメージしていた形とは違うけれど、「お客さんと直接触れあって反応をもらう」という部分に変わりはないし、続けてきたことで少しづつ収入源になってきています。

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ささまんの「体」:

新しいパフォーマーのあり方をつくり、太陽のような存在になる



SNSではいろいろな実験ができていますが、本当はリアルと併用して活動していくのが理想です。北陸というエリアは不利だけど、SNSでの発信で全国の方に知ってもらい、YouTubeで技を見てもらって、その次はリアルでパフォーマンスを見てもらいたいんです。

実は今オンラインサロンを運営していて、参加してくれるファンの方向けにレインボースプリングの練習会を開催したり、ブログで活動報告を行っていたります。

やっぱり大道芸やパフォーマンスって「現地でお金を稼がないといけない」という固定観念があると思うんです。マネタイズできるポイントがそこしかないと、開催場所が東京や大阪などの大都心に限定されてしまい、北陸では文化が根付きません。でももし他でマネタイズできるようになれば、今はまだ届いていない場所、究極的には僻地の公園などにも届けることができるはず。それに自分としては、まだ周囲に動画を活用している人も、コミュニティを自分で持っている人もいないので、それができるだけで唯一無二の存在になれるのではないかと感じています。現地で稼ぐことを考えずに他でマネタイズが出来れば、もっとやりたい場所でやりたいことができるんじゃないかと思うんです。

やっぱり、北は北海道から南は沖縄まで、応援してくれる方の声にこたえたいんですよね。「数年前まで何も持っていなかった人間でも、ちゃんとやったらこうなれる」という姿を見せたいし、そんな僕を見て自分もチャレンジしてみよう、夢を叶えるために頑張ってみようと思ってもらえることが嬉しいんです。

きっと、僕は太陽みたいな存在になりたいんだと思います。いろいろなジャンルに細分化してそれぞれが派閥のようにトップを奪いあうのではなく、どこからでも誰でもアクセスできる存在としての「中心」。上を目指すのではなく「中心に行く」のが、僕なりの目標ですね。

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ささまんにとって、「パフォーマンス」とは?



自分を成長させるためのツールであり、それはもう「人生」と言えるのかもしれません。やればやるほど新しい発見があって、とにかく楽しい「実験場」です。

今挑戦している「ヘブンアーティスト(東京都が実施している大道芸人公認ライセンス)」は、今回で3回目のトライになります。北陸のパフォーマーでは持っている人がいないので、取れたら唯一の存在になれるはず。ヘブンアーティストになって、知名度をつけて、「こんな場所でやる人なんていない!」というような場所でパフォーマンスができたら、もっともっとおもしろくなるんじゃないかな。


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インタビュアーコメント

分析と試行を積み重ねながら、他の誰とも違うポジションを目指してチャレンジを続けるささまんさんは、まるでマーケターのよう。思い描くパフォーマーのあり方が実現できれば、もっと全国津々浦々までパフォーマンスが行き届く世界になるのではないでしょうか。是非、ささまんさんへのご依頼をお待ちしています。

(Interview&Text:Shiho Nagashima

ささまん Tint Room

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