【Three Primaries】Vol.15 風船屋key さん

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【THREE PRIMARIES】VOL.15 風船屋KEY さん

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「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第15回は、舞台俳優の顔も持つ劇場型バルーンパフォーマーとして活躍中の風船屋Keyさんにお話を聞きました!

風船屋Key「心」:

負けず嫌いが原動力。制約が創造力に火をつける



実は、バルーンアートはやりたくて始めたものではないんです。もともと舞台役者を目指していたんですが、それだけでは生活していけなくて。「人前に出るもの」「創造性のあるもの」で探して見つけたアルバイトが、バルーンアートだったんです。

ただし応募の決め手は、時給1,500円って聞いたから(笑)。なのに、時給1,500円には「バルーンアートを80種類つくれるようになったら」という条件がついていたんです。それならばと「初日までに80種類つくれるようになったら、時給1,500円になりますよね?」と交渉して、独学ですべてやりきって時給アップさせました(笑)。

基本的に負けず嫌いなんですよね。制約があると燃えちゃうんです。アルバイトを始めたあとも、見にくる子供たちに「え~、これつくれないの~?」と言われるのが悔しくて、ムキになって試行錯誤をしていく中でレベルアップしてきました。

さらに、そのアルバイトだけでは足りないと思い、近くのスーパーのウォーターサーバー販促エリアでバルーンアートをやっているところに「やらせてください!」って直談判したりもしました(笑)。風船が1種類しかないアルバイト先とちがって、そこにはいろいろな種類の風船があるし、暇な時間に先輩が出してくるお題にチャレンジするのがすごく楽しくて。無茶なお題ばかりで難しかったり、既存のつくり方が通用しなかったり、当然なかなかうまくいかないから、これもまた燃えてしまう。その時に試行錯誤したことが、現在の僕のやり方に繋がっています

もちろん負けず嫌いなだけでなく、「喜ばせたい」という思いも根底にあります。風船を渡した時の子供の笑顔って、本当にぱっと花が咲くようなもの。自分が手渡したものでそれが生まれていること、そして直接「ありがとう」と言ってもらえることが、僕がバルーンアートに飽きない理由だと思います。

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風船屋Key「技」:

物語の中を生きるキャラクターを創造する



もともとは人前で無茶するようなやんちゃな子供だったのが、転校して環境が大きく変わりました。周囲になじめず引っ込み思案になり、図書館にこもるようになった僕にとって、そこで触れるたくさんの「本」と「物語」が大きな楽しみになっていきました。

物語って、自分の中の既存の価値観を壊せるから好きなんですよね。シェイクスピア、森鴎外、恩田陸…いろいろ読みましたが、特に好きだったのは『キノの旅』というライトノベル。「ある国の変わった部分を3日間見て、また次の国へ旅に出る」という筋書きの作品で、物語を通して国毎に異なる価値観に触れることができるんです。触発されて、「自分の価値観や常識を何かひとつ壊したら、人はどう変わるのだろう?」というテーマで脚本を書いたりもしました。

こういった物語の着想の“種”として、「妖怪」に着目しています。妖怪って、基本的には想像の産物で、「誰かが怖いと感じたことへの理由付け」のようなもの。それが今日まで続いている背景には、きっと思いついた人以外の誰かの「こうだったらもっと怖いのでは?」という妄想が無数にあったはず。

であれば、僕もそこにひと手間加わえて、さらに僕の好みに出来るかもしれないですよね。そうやって、妖怪をベースに「そういう人間がいたらどうなる?」と考えるのが、物語をつくるスタート地点になったりします。「語られていること」へ別の解釈や視点を投げかけてみたり、「語られていないこと」を自由に想像してみたり。このやり方で、実際に「唐傘」をテーマにした一人芝居をつくったりもしました。

この「物語」というテーマ、実はバルーンアートにも共通しています。一連のショーには物語性を持たせているし、むしろそうならないほうが難しい。頭の中でショーの冒頭と結末を決めて、その間をどのように繋ぐか考えていくんですが、そこに流れがないとやっぱり気持ち悪くて。

登場するキャラクターも、「主人公がこの結末にたどり着くために出会っていないといけないキャラクターは?」と考えて生み出していきます。だから風船でつくるものは、ある意味僕にとって“物語の登場人物”なんです。僕は監督で、演出家で、物語のつくり手でもある。バルーンアートをつくる時も、演出家として舞台をつくるときと同じような視点で見ています。離れたところから見る目を持つ、客観視するという意味の「離見の見」という言葉があるんですが、まさにそんな感じですね。

それにやっぱり、「このキャラクターならこう動く」って自ずと決まってくると思うんです。キャラクターの解像度があがればあがるほど、「こうされたら、こう動くはず」という行動原理がみえてくるもの。展開の都合上つくられた動きのような「動く理由がわからないもの」は、気持ち悪くてしょうがなくて。舞台でも、役者の演技が表面的だと「今の芝居、腑に落ちてないでしょ?」なんて言われたりしますが、バルーンアートでも「それっぽい」だけでは不十分だと思うんです。

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風船屋Key「体」:

こだわりを貫き、血肉に変える



僕のバルーンアートはよく「特殊だ」と言われます。立体感があり、木で組むようなつくり方をしている、と。普通はある一面からみて成立していれば良いという考え方もありますが、僕の場合はどの方向から見ても成立するようにつくります

例えば僕は、骨格、筋肉の流れ、皮、毛…という順に考えてバルーンアートをつくっていきます。以前「筋肉ムキムキのカンガルー」というオーダーをもらった時は、カンガルーの筋繊維を調べるところからはじまり、表からは見えない背中の筋繊維構造までつくりこみました。広背筋にあたる部分までつくったおかげで、ひっぱれば腕が動くなど、もはやバルーンアートには要らない機能だった(笑)。

ただ、初期の頃は筋繊維が丸見えでグロテスクなものも多かったのが、最近では“皮”になる風船の中に筋繊維にあたる風船をおさめたりと試行錯誤しています。かなり手間がかかるんですが、「内部が構造がこうなっていないと、外から見た時にこうは見えない」という部分にどうしてもこだわりたくて。やっぱり、見えないところまでつくりこむことがリアリティに繋がるんだと思います

こうしたこだわりはなかなか人には伝わらないかもしれませんが、次につくる時に楽になるんですよね。試行錯誤した部分が少しずつ活用できたり、スムーズにいくようになったり、納得感を得やすくなったり。だから、こだわりは大切だと思います。どこかでこだわったことが、他でショートカットとして活きてくる。それは、役者でもバルーンアートでも、その他すべてに共通することで、それが「血肉になる」ってことなんだと思います。

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風船屋Keyにとって、「パフォーマンス」とは?



何かを決めるときの行動原理の根っこであり、何を見るにも「種を見つける」という感覚になる。表現やパフォーマンスは僕の生活の「主軸」ですね。

難しい仕事や大きな作品の依頼を頂くと燃えるので、これからもそういう仕事をどんどんやっていきたいですね!大きな会場のディスプレイで、特大サイズのドラゴンをつくる…なんて依頼があったら最高です。


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インタビュアーコメント

物語の中を生きる“登場人物”としてのバルーンアート。Keyさんのこだわりをまとったその作品たちは、一味もふた味もちがう魅力を発することでしょう。是非Keyさんへのご依頼をお待ちしています!

(Interview&Text:Shiho Nagashima

風船屋key Tint Room

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