【Three Primaries】Vol.7 かんな さんへ インタビュー

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【THREE PRIMARIES】VOL.7 かんな さん

interview42 「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第7回は、VRを使ったパフォーマンスやライブペインティングを中心に活動するVRアーティストのかんなさんです。

かんなの「心」:

自ら考え解釈したものを、自分なりの表現にしたい



昔からどんどん制作のスタイルを変えていて、VRの前は絵画などをやっていました。元々は5歳の頃にピアノを始めてそのまま音大に進学・卒業し、コンサートやレッスンを行っていたんです。始めた頃は楽しめていなかったピアノも、15歳の頃に出会った先生のおかげでとても面白くなりました。譜面を見て考え、音符を手がかりに分析していくことで幅広い解釈が出来るようになり、それを表現したいという思いが生まれてきたんです。

その後、絵画に目覚めたのは突然でした。友人に誘われて美術館に行った後、久しぶりに自分で絵を描いてみたらとにかく楽しくて、ハマってしまったんです。「絵描きになりたい!」と、すぐに芸大に行くために動き始めました。ある人には「7年かかる」と言われましたが、「それでもいい」と湘南美術予備校に入学。片道2時間の距離でしたが、ウマが合う先生と出会えたおかげで、半年で芸大に入学できたんです!その先生から「絵」というものについて教えて頂き、絵に対する解釈が大きく変わりましたね。ピアノと違い、絵はとても自由ですよね。

VRは試しにヤフオク!で中古のヘッドセットを買ったのがきっかけですが、これが大当たり!絶対に売りません(笑)。ヘッドセットを被れば違う世界に行って帰ってくる体験が出来て、とにかく純粋に面白い。空間に絵を描けて、彫刻がまるで宙に浮いているかのような世界。表現の幅が広がることにインパクトを感じました。自分がやりたいことを表現するのに、とてもフィットしているなと感じています。

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かんなの「技」:

飽くなき探求心で、表現方法を探し続ける



最近は、プログラミングやBlender(無料の3DCGソフト)などにも触れています。初めは難しそうに感じましたが、友人がやっているのを見ていたのでハードルを超えられたのかもしれません。新しいことをやりたくて常に何か探しているというよりも、どんどん新しいものが目に入ってくるので、その中で取捨選択して見つけている感じです。

なぜ新しいことに取り組むのかと言われれば、自分なりの表現方法が欲しいから。「自分の作品を作らなきゃ!」という思いがあり、常にどういう表現方法がいいか考えたり、他の人の作品を見て回ったりしています。自分に取り入れられる表現を探しに、昨年もたくさんのアートを観に行きました。特に良かったのは名和晃平さんの展示。チームを組んで最新技術で作るその表現は、とても綺麗で美しくて…悔しかった!でもそこで沢山吸収することが出来ました。名和さんの時ももちろんですが、展示では勇気を出して声をかけ、解説を聞くようにしています。そうすれば、作品を観ているだけではわからなかったことも、知ることが出来るからです。

元々のピアノからどんどん別の表現へと移行していることもあり、表現方法のジャンルへのこだわりや、移行していくことへの抵抗感はありません。VRへの移行は、かなり表現の幅を広げてくれました。2Dから3Dになったのが非常に大きな変化で、「どこにでも描ける!」と子供のお絵描きのようなテンションで取り組んでいます。6時間ぐらいぶっ通しで描いてしまうので、データ容量が膨大になって視界がガビガビしちゃうのだけが難点ですね(笑)。

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かんなの「体」:

自然と科学の間に立つ「架け橋」になるために


今「分子生物学」を学んでいます!コロナ禍に関して書かれた朝日新聞の社説で、自分のイメージとはまったく異なるウイルスの動きの実態を知ったのがきっかけ。それによると、実際は人間の細胞の方からウイルスを取り込んでいるそうで、なぜなら生きていくためにはウイルスによって自らを揺さぶり、壊して進化させる必要があるからなんだとか。「今人間は大きな進化の途中だ」という考え方に、とても感銘を受けました。

その社説を書いたのが福岡伸一さんという生物学者の方で、根底にあるのが「動的平衡」という、生命を「絶え間なく分解と合成を繰り返しながらバランスをとること」だとする考え方。人間は常に生まれ変わっていて、記憶や文化も同じ。壊してまた生む、だから壊すことが大切だとする考え方で、私はこの「動的平衡」を作品で表現したいんです!人間自身の身体の仕組みなので、きっと美しい作品になるはず。自分の作品制作のプロセスも、取り込んで壊して新しくして…と、同じ流れになっているのも面白いですね。例えは悪いですが、フンコロガシのフンみたいな感じ(笑)。

そもそも、学問や科学、哲学とアートは繋がることが出来るはずだし、お互いに貢献しあえるはず。これまで科学第一で自然を無視して進んできた中で、コロナ禍という事態が降りかかりました。今あらためて自然に対して思いを馳せたり、あり方をもう一度考えようというタイミングで、動的平衡という自然のあり方をもって、科学と自然との間に立って私が架け橋になりたいんです。

そうしたことを通して、見てくれる人を圧倒したいですね。いつもはしていない脳の動きをさせたいし、野蛮と言われているものと自然が表裏一体な「トランス状態」を感じてほしい。それこそが人間の中にあるもので、それらをしっかりと見つめ、その体験を通して動的平衡についても知ってほしいんです。

ちなみにトランス状態とは、例えばアスリートのランナーズ・ハイのような状態。アートやシャーマン、各国の文化・宗教などとも密接に繋がっています。最古の美術は洞窟壁画と言われていますが、これはトランス状態で掘られたものだそう。「現実に見ているものとは別の視点で見えるもの」を美しいと思って洞窟壁画が描かれ、それによって美術が始まったのであれば、生命を別の視点で捉える動的平衡もきっと美しい作品になるはず。そろそろ消化して作品にしたいです!

最終的には、私が朝日新聞の社説によって人生が変わったように、私の作品が何かを考えたり、見方を変えるきっかけになる等、人に対して影響を与えられたらいいなと思っています。そのためにも、作品にすることで「簡単にする」ことは意識しています。難しいまま出すことも出来るけれど、それでは限られた人にしか観てもらえない。それに、分かりやすいことは美しさと大いに関係すると思っています。例えば動物だと孔雀の羽は大きい方がいいですよね。大きさや鮮やかさなど、シンプルでわかりやすいことが美なのではないでしょうか。私も、孔雀の羽ぐらいわかりやすいインパクトを残したいですね!


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かんなにとって、「パフォーマンス」とは?

私にとってのパフォーマンスは「儀式」であり、祭りであり、皆で共有する場。そこでトランス状態を体験し、普段できないことや少しのタブーを犯した後に、それぞれの日常に戻っていく感じ。そうした場があることで人間は攻撃性を発散してバランスを保っていたのに、最近はそれらがどんどん無くなってしまい、違うところに攻撃性が出てしまっていますよね。私の考えは、宗教が担っていたそうした部分をアートが担う「代理宗教」的な考え方に近いのかもしれません。


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インタビュアーコメント

独自の世界観を持つカンナさん。「動的平衡」という考え方との出会いにより、取り込んで壊して新しくして…という、彼女自身の作品制作のプロセスにもより一層命が吹き込まれたように感じます。VRという新しいキャンバスの中で、それらがどのように表現されるのかとても楽しみです!

(Interview&Text:Shiho Nagashima)

 

撮影:加賀見
※注)画像の無断使用は禁止されております。

 



かんな Tint Room

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