【Three Primaries】Vol.4 アリス(Alice)(マジシャン・イリュージョニスト・和妻師)さん へ インタビュー

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【THREE PRIMARIES】VOL.4 アリス(ALICE)(マジシャン・イリュージョニスト・和妻師)さん

interview20 「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第4回は、マジシャン・イリュージョニスト・和妻師のアリスさんです。

Aliceの「心」:

プリンセス天功に憧れ、“不思議”を体現するマジシャンへ



幼い頃にプリンセス天功さんのマジックに出会い、興味を持ちはじめました。初めて見たのはテレビの中でしたね。綺麗で、不思議で、マジックって凄いな!と。でも、そういうことが出来るのはテレビの中の人だけ、別世界の話だと思っていたんです。

その意識が変わったのは、大学進学で大分から千葉に出てきた時。マジックサークルに勧誘されてショーを見せてもらった時、初めて生で見て、それが別世界の話ではなく、本当に出来るものなんだとわかったんです。「マジックって、人間に、しかも学生に出来るものなんだ!」と(笑)。その時特に心に残ったのは、ボールが浮くマジックでした。「どうして浮くの?おかしい!」と、その不思議さに惹き込まれました。タネを知りたくてまんまと入部してしまい、それから本格的に自分でもマジックをやるようになりました。

卒業後は、昼間は別の仕事をしながら、平日夜や土日にマジックの仕事をしていました。徐々にマジックの比率が増えてきて、あるタイミングからマジック1本で行くことに。最初はプロマジシャンのアシスタントをしつつ、先生にならって技のバリエーションを増やし、一人でショーをつくれるようにしていきました。現在は独立して活動していますが、ステージマジック、和妻などバリエーションを広げています。

実は最初の頃は、人前でマジックを披露するのは恥ずかしくって。でも、大学でショーに出たあたりから楽しくなってきて、今に至っています。自分のパフォーマンスを見てもらえるのはもちろん、メイクや衣装をきちんとして、スポットライトを浴びて、お客さんの反応をもらえるのはとても気持ちが良いですね。

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Aliceの「技」:

ひとりひとりに話しかけて、つくりあげた“不思議な世界”へ誘う



現在は紹介でお仕事を頂くことが多いです。どこかで公演を見た方がオファーをくださったり、一度お仕事した方が別の機会にまた呼んで下さったり。色々なマジックが出来ることは強みだと思っています。クロースアップマジック(トランプやコインなど目の前で見せるタイプのもの)から、イリュージョンもあり、有栖川萌(ありすがわもえ)名義で行っている和妻(日本の伝統的な奇術)もある。その場に合わせたものを提供できるのは大きいかなと。

和妻は江戸時代発祥のマジック。口上などもありますが、アレンジやデフォルメをするようにしています。昔のものをそのままやってもお客さんには伝わらないし、全部リアルにやると地味になってしまう(笑)。お客さんの期待を考えると、多少派手にしたほうが楽しいと思うんです。忠実な再現を見に来ているわけではないと思うので、そのあたりはチューニングしています。

和妻の演出には、映画や時代劇を参考にしています!チャン・ツィー主演の『SAYURI』、あとは蜷川実花監督の『さくらん』など。ハリウッド映画のちょっと間違った日本の描写は、外国から見た「和」のファンタジックなイメージを知ることが出来るし、最近の派手な「和」のテイストもとても気になりますね。それ自体が、和妻とイリュージョンが合体したような感じがありますよね。

イリュージョンは、やっぱりプリンセス天功さんが目標です。自分でマジックをやってみて、小さい頃とは見る視点が変わりましたね。今見ているのは演出面。プリンセス天功さんはとにかく華があって、ひとつひとつの動きがとても綺麗で計算されているんです。自分はまだまだ比べられるレベルまで来ていないけど、でもそもそもプリンセス天功さんになれるわけではない。自分らしい表現を見つけられるといいな、と思っています。

ちなみに私がマジックをする時のポイントは、「心の中で話しかけながらやること」。「ここにハンカチがありますよ」など、お客さんに心の中で話しかけているんです。見てくれている人ひとりひとりに視線を合わせながら、その人に話しかけるような気持ち。それが遠くの人まで出来ると、マジックも遠くまで届きやすいんです。人に対してだけでなく、小道具に対しても話しかけていますね。浮かせるマジックが好きなんですが、浮くものに対しても話しかけています(笑)。小道具と友達になって、話しかけると浮く。これは私が編み出した技です!

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Aliceの「体」:

魅力的な現実逃避の体験を。だから私は浮きたいし、浮かせたい


前述の通り浮かせるマジックが好きなんですが、最終的には自分が浮きたいし、飛びたいんです。『アラジン』とか『魔女の宅急便』とか、好きな映画も浮くものが多いですね(笑)。不思議じゃないですか、浮くのって!もともと「普通の人とは違う存在になりたい」という思いはあったかもしれません。パフォーマンスでも普通じゃない感じを出したいし、不思議な存在でありたいんです。

実は素はシャイな性格。なので普段は「普通」でいいのですが、ショーの時は自分が変わる感覚があります。ただ服を着ただけではだめだし、服を着てダンスをしろと言われても違う。マジックをしている時でないと、その感覚にはならないんです。「マジックなら自信がある」ということなのかもしれません。その自信は、日々の積み重ねと、見てもらって驚いてもらえた経験が積み重なって出来たものなのかも。

それでもまだまだ、自分の公演を見返して落ち込むことはありますね。「ここ姿勢悪いな」とか気づいてしまう。でも面白いのは、マジック自体が完璧でもお客さんにウケないこともあるし、失敗しても反応が良いこともあるということ。自分でもそれがなぜだかまだわからないのですが、お客さんはマジックだけを見ているわけじゃないのかなと思っています。人間ぽさや素の部分を感じてくれているのかなと。私は完璧にしたいんですけど、たまに素が出ちゃった!ということもありますね(笑)。

それでも、よく「マジシャンぽくない」と言われる部分、押しが強くない、ふわふわした雰囲気などは自分の素であり自分だけのものなので、その雰囲気を活かしたマジックにしていけたらいいなと思っています。たくさんの人に、現実とは違うちょっと不思議な世界を体験してほしいですね。映画を観るような感じだけど、観るだけの映画とは違い、マジックはその世界観の一部になれます。自分が選んだものがあたったり、自分が持っているものが変わったり、体験することができる。ちょっとした現実逃避として、私も現実から離れたいし、見てくれるお客さんも一緒に離したいな。「日常だけど、ちょっと不思議で浮遊感のある感じ」を味わってもらえたらいいなと思います。


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Aliceにとって、「パフォーマンス」とは?

私はマジックが好きなので、どんな場所でもやりたいし、どんな技でもやっていきたい。マジックをやって人生が変わったんです。やっていなかったら平凡で普通の人生だったと思うけど、マジックをやったことで日本の様々な場所にも、外国にも行けました。たくさんの人に会って、特別な体験をできました。パフォーマンスが人生を変えてくれたので、パフォーマンスのない人生は想像できません!

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インタビュアーコメント

ふわふわとした雰囲気が印象的なアリスさん。プリンセス天功さんを通して知ったマジックという「不思議な世界」を、どこまでも純粋に体現し、作りあげようとしている姿が素敵でした。たまたま聞いた「好きな映画」が、どちらも「浮く」作品だったのもとてもアリスさんらしい!今後の活躍も楽しみです。(Interview&Text:Shiho Nagashima)

 

撮影:加賀見
※注)画像の無断使用は禁止されております。

 



Alice(アリス) Tint Room

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有栖川萌(ありすがわもえ) Tint Room

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