【Three Primaries】Vol.10 パフォマー コーキ さん

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【THREE PRIMARIES】VOL.10 パフォマー コーキ さん

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「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第10回は、先日のオンライン発表会vol.1Kで見事大賞を受賞した大道芸人・マジシャンのコーキさんが登場です!

コーキの「心」:

自分だけが出来ることを探した“目立ちたがり屋”の少年時代



もともと目立ちたがり屋な上に身体のバネがあり、体操、スイミング、空手など様々な習い事をやっていました。中でも体操は得意で、発表会で自分一人だけ跳び箱の段数を高く用意されていたり、跳んだ後のバク転を期待されていたり(笑)。スポットライトがあたる度に、気持ちいい!と感じていました。

マジックを始めたのは、小学生の時に誕生日プレゼントでもらったことがきっかけです。ただ、市販の道具だったので「それ知ってる!」と言われてしまい、「自分だけじゃない」ことに挫折感を感じていたんです。でも、高校に入ってからふらりと立ち寄った図書館で見つけた『カードマジック事典』を読んだら、再びハマってしまって。活字が苦手なのに、その本だけは頑張って読み進めましたね。市販の道具はそれ自体に仕掛けがあるけど、これならトランプさえあれば披露できる。その素晴らしさに気づいてのめりこんで行きました。

実は授業中に机の下で練習したりしていたんですが、一度先生に見つかってしまったことがあります。「マジックやってるのか?じゃあ今から見せてみろ!」と、急にクラス全員の前で披露することに(笑)。目立ちたがり屋精神全開で臨んだんですが、その時初めて「震え」を経験しました。お腹の芯から震えがきて、足も手も震えている。武者震いのような体験でしたね。

その後、マジックサークルのある大学を受験したものの落ちてしまったので、入学した大学で自分でサークルを立ち上げました。無事メンバーも増えて公認サークルになり、ある日たまたま見にいったのが静岡で毎年開催されている「大道芸ワールドカップ」。そこでジャグリング道具を衝動買いしました!中国ゴマがかっこよくて、自分でやってみたくて(笑)。練習していくうちに他の道具もやりたくなって、どんどん道具が増えていきましたね。マジックは、演じる時は目の前でリアクションを貰えるので楽しいけど、練習は地味で楽しくない。ジャグリングは、人前での盛り上がりはマジックにかなわないけど、練習が楽しい。熱量はジャグリングの方に向かっていたので、サークルもマジック&ジャグリングサークルに変えちゃいました(笑)。。

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コーキの「技」:

毎回異なるお客さんと、毎回異なるパフォーマンスを作る



当初は大学のパーティや付属幼稚園などに呼ばれてパフォーマンスをしていましたが、徐々に「自分たちで路上に人を集めてやりたい!」と思うようになっていきました。でもいざデビューを迎えたら、「え?どうやったら人って集まるの!?」という状態で…。中国ゴマなどをやるとちょっと集まったりはするものの、最後まで見てくれるかは繋ぎ方次第。でも僕たちは、単調なパフォーマンスしか出来ていなかったんです。だから、次の道具に変わったらお客さんは皆帰ってしまう。人に呼ばれてやるのと、自分たちでやるのとでは大きく違うことを思い知りました。路上では、興味を持っていない人たちも惹きつけないといけない。そして最後まで見てもらって、お金にも繋げないといけない。そう思うと僕らのパフォーマンスなんてちゃっちいな、と気づいたんです。

それからは先輩のパフォーマンスやYouTubeを見て研究したり、道具の配置や演技構成を変えたり、試行錯誤しました。遠くのお客さんを集めていくスタイルは、その時培われましたね。最初は大きく目立つ技を披露し、次はもうちょっと手元の技、という風に徐々に近づけていくようにしているんです。他に、切れ目を感じさせないスムーズなパフォーマンスにすることも課題でした。でもそれらを改善してみると、断然見続けてくれる方が多くなったんです!

お客さんと絡む現在のスタイルでは、最終的には「お客さんに笑いをとってもらいたい」と思っています。そのためにどうお客さんを誘導するか、かなり考えますね。どのお客さんが面白いリアクションをしてくれそうか、常に反応を見ています。事前に様々なパターンを考えますね。臨機応変に対応するのは難しいことですが、先輩芸人のようにアクシデントも笑いに変えられるように学んでいきたいと思っています。

実は以前、スタチューのパフォーマンスでお客さんを怒らせてしまったことがあって。「2人目のお客さんの時は、一度握手をスルーするフリをする」という盛り上げるための振る舞いが、逆に不快感を与えてしまったんです。すごく反省しましたね。その時の失敗から、相手を置いてきぼりにしない、可哀そうな想いをさせないことを考えながら、相手の立場に立ってショーを作るようになりました。以前は「目立ちたい」という思いのせいで自分本位な部分もありましたが、今は客あげされたお客さんも、見ているお客さんも楽しくなるように考えています。ある意味、お客さんと一緒にパフォーマンスを作っているんです。毎回異なるお客さんと毎回異なるパフォーマンスを作ることができるのは、難しいけどやっぱり面白いですね!

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コーキの「体」:

パフォーマンス中こそ、ありのままの自分でいること



実は以前「芸王グランプリ」というコンテストに出場した際、講評で「キャラがない」と言われてしまったんです…。グサッときましたね。同じことを言って、同じウケをとって、同じ喋り方で、他の芸人と変わらない、と。公開処刑ですよ(苦笑)。それから「自分のキャラってなんだろう」と考えるようになりました。もともとはジェントルマン風でアナウンサーのような喋り方をしていたんですが、ふと「それなら普段の自分、ありのままの自分を出せばいいのかも」と思ったんです。タメ口を使ったり、衣装も自分の好きな水玉模様のサルエルパンツをはいたり。そうしてから、とても幅が広がりました!講評では「動きがない」とも言われたので、技をやりながら客席を廻ったり、もっとお客さんと接するように変えたり。そこで吹っ切れましたね。何をやってもいいんだ、と思えるようになりました。

ネタのアイディア自体は、ふとした瞬間に天から降りてきます。デパートで何気なく見ている時にも、商品を自分が使うイメージが沸くことがあります。『カードマジック事典』を発見した成功体験があるので、本屋さんなども必ず見て廻るようにしています(笑)。あとは、ラジオから流れてくるフレーズややりとりから「これ、お客さんとやったら楽しそう」と思ったものを自分なりにアレンジして取り入れたり。常にアンテナを張っています。

また、ずっとホテルで接客の仕事をしているので、そこでアイディアが浮かぶこともあります。制服のポケットにはいつもネタ帳が入っています(笑)。思いついたらすぐに書き留めるようにしていて、結構見返すことも多いです。自分のパフォーマンス動画もなるべく撮って、見返しています。「こんなに面白いお客さんの反応があったなら、こういう返しが出来たらよかったな」など、客観的に見て反省点を探します。逆に「ここ凄く面白い!」など、自己肯定感をあげることもできます(笑)。やっぱり見返すと、次に繋がるヒントがあるんですよね。「この演目最近やっていないけど、今の自分ならもっと面白く出来そう」とか。過去の自分も見返して、常にヒントを探しています。

オンラインパフォーマンス発表会は、初回は何も受賞出来ませんでした。でも知り合いのまめちゃんの作品を見て、「こういうことか!」と。ショートフィルムのように世界観を作り、撮り方も工夫していて、ストーリーがある。もともと初回の時に「月の光をとる」というアイディアがあって、これは次回冬があればイルミネーションに変えて使おうと思っていたんですよね。なので、そのアイディアにまめちゃんの動画から得たものを加えて制作しました。ちなみに温めているネタはいろいろあって、夏まで視野にいれていますよ!

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コーキにとって、「パフォーマンス」とは?

非日常を生み出して、お客さんの心を動かすもの。自分も人のパフォーマンスに感動したり、心を動かしてもらったから、同じように僕を見て感動した、泣けた、元気が出た、そういう風に思ってもらえるパフォーマンスに憧れています。あとは、自分自身も喜怒哀楽を出し、さらにお客さんの喜怒哀楽も引きだしたい。「凄かった」より「面白かった」と言われたい。僕のパフォーマンスの行き着く先は、「何をやったかあまり覚えてないけど、なんかやりとりが面白かったし。もう1回見たいね」というもの。演目は道具に過ぎないんです。道具の印象をあえて感じさせない、やりとりで魅せるようなパフォーマンスにしていきたいですね。


インタビュアーコメント

演目中の技はもちろん、その先にあるお客さんとのコミュニケーションをとても大切にしているコーキさん。挫折を経ながらも、パフォーマンス中こそありのままの自分でいようとして辿り着いたのが現在の姿なのかもしれません。既に夏のオンライン発表までネタを考えているとか!今後の活躍も楽しみですね。

(Interview&Text:Shiho Nagashima



パフォーマー コーキ Tint Room

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