【THREE PRIMARIES】VOL.9 菅原奈月 さん
「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第9回は、先日のオンライン発表会Vol.1KでMCを務めたシンガー・MC・舞台女優の菅原奈月さんにお話を聞きました!
菅原奈月の「心」:
誰かと“一緒に出来る”歌と踊りの楽しさに魅せられて
NHK「おかあさんといっしょ」の子供たちが歌って踊るコーナーが好きで、実家近くのヤマハ音楽教室に2歳半ぐらいから通っていました。幼稚園に入ってからはエレクトーンのグループレッスンを受け、小学二年生の時にピアノに切り替え、音楽にはずっと触れていました。
それと共に、幼少期からずっと続けていたのがクラシックバレエ。可愛い衣装を着て発表会に出て、ライトを浴びてはきらきらと目を輝かせていたそうです(母談笑)。発表会が好きなのはもちろん、今思うとピアノは自分と向き合い続ける緻密な作業の繰り返し。それよりは「お友達と一緒に出来る」バレエの方が楽しかったのかもしれません。地方だったので、東京から来た先生とペアで踊る機会があったのも、とても刺激的でした。
そうして音楽と踊りを続けてきた中で、小学5年生の時に劇団四季のミュージカル『ライオンキング』に衝撃を受けたんです!歌って踊って、音楽も踊りも入っていて、舞台セットもかっこいい…「これだ!」と感じました。その後桐朋学園芸術短期大学の演劇専攻ミュージカルコースに進み、さらに深く学びたいと考えて東宝ミュージカルアカデミーにも通いました。ミュージカルの基礎を学ぶのはもちろん、卒業時に『レ・ミゼラブル』を上演するという大きな目標に向けて、1年かけて壮大な文化祭をやっているような感覚も多少ありました。当時は「仕事にするため」というより、「あの作品に出たい」という思いで動くことの方が多かったですね。
今はソロ活動以外に「ICHIGO TANUKI」というユニットでも活動していますが、絶賛改名予定です!私はカバー曲が中心なんですが、秋葉原で開催された、とあるイベントに出演する際にオリジナル曲が必要になり、困って声をかけたのが「ICHIGO TANUKI」のパートナーであるロシア人のヴィタリー・スンツェフ(Vitaly Suntsev)。以前、別の仕事で意気投合し、ちょうどギターもやってる!ということで(笑)。それで急遽ユニット名を名乗らないといけなくなり、私がたぬきに似ているということでたぬき、あとはその時いちごをつまんでいたからいちご、ぐらいのゆるい感じでユニット名が決まりました(笑)。
菅原奈月の「技」:
経験を転用し、今必要なスキルへと繋げていく
以前はバレエやミュージカルなど「大きな舞台に出ないと」と思っていて、「あの作品のこの役を演じなければ、今までやってきたことは意味がない」ように感じていました。「こんなに習い事をさせてあげたのに」と直接両親から言われたことはないけれど、やっぱりエネルギーも時間もかけてもらったので、分かりやすい「コンクール入賞」等の形でその期待に答えられているのか、自問自答していました。
でも、以前にマジシャン・イリュージョニスト”アリスさん”のステージでアシスタントをさせて頂いた際、アシスタントとして「アリスさんを立てた方が良いタイミング」「こちらが目立った方が良いタイミング」を把握して対処するのに、バレエでやっていたことや学校で学んだ経験が活きていたことに最近やっと気づいたんです。決して無駄ではなかった。少しずつ繋がってきてるのかなと思えるようになってきました。
ソロでの経験がユニット活動に活きてくることもあります。現在パフォーマンスをお見せするのはYouTubeチャンネルがメインになりつつありますが、その中ではたまにライブ配信もするんです。視聴者の98%はロシアの方で、ライブ配信中のコメントもほぼロシア語。基本はヴィタリ―がしゃべるんですが、私も絡んでいきます!しゃべれないなりに「どうしたら面白くなるか」を考えて実践していけるのは、ニコニコ生放送を経験していることや、MCのお仕事の経験などが活きていると信じています。
YouTube自体は始めて2年経ちますが、未だに何が正解かわからない。すごくこだわってしっかり狙った渾身の企画があまり伸びなかったり、逆にダメ元で昔やった曲のセルフリメイクをファーストテイク風に撮ったらそれが意外と伸びていたり。自分の趣味ではなく「観る人はどういうものが好きか」を考えて選曲しているのですが、「これでいいの!?」という時も「こんなに頑張ったのに…!!」という時もあります。お客さんの反応は勉強になるけど、何がポイントなのかは未だにわからない。最低限の技術は必要ですが、動画の編集を頑張ったからといって、再生数が伸びるわけではないんですよね。
ただ、自分で編集をやったり、YouTubeの動画を作っていく中で、作り手としての視点が増えてきた感覚はあります。最近NETFLIXで『愛の不時着』を観たのですが、画面を二分割することで2人が思いあっている様子を表すシーンなど、「この表現かっこいい!」と思いました。大好きな『名探偵コナン』のアニメや映画を観る際にも、カット割りやテロップの入れ方、キャラの置き方など、多少気にしている自分がいるのを感じます。編集は当初ヴィタリーに任せっきりで、自分は歌うだけでした。でも、公私ともにお世話になっていて最近はアニメ鬼滅の刃挿入歌「竈門炭治郎のうた」を歌われている。歌手、声優、ナレーターの中川奈美さんのバースデーライブ用映像を作ることになった際、「お世話になった方だからこそ、ちゃんとしたものを自分で作りたい!」と思ったことがきっかけで、自分でもやるようになりました。そうした視点の変化はありますね!
現在、渾身の(笑)力作が中川さんのチャンネルに掲載されている「キミ ハ キラメキ!」という曲です。なんと、エンドクレジットは総勢100名!新型コロナウィルスのせいで卒業式がかなわかった、卒業生、ご家族、関係者の皆さんへ送る曲を愛媛の皆さんと作りました。動画編集は過去最高?に膨大なデータ量でしたが、前向きに取り組むことができました。私たちのチャンネルではアコースティックロシア語版も載ってるので併せてお楽しみください。
菅原奈月の「体」:
出会いを繋げ、輪を作り出していく
ICHIGO TANUKIの改名については、周囲からずっと言われていたことではあるんですが、とある衣装との出会いで「やっぱり必要だ」と感じました。木更津に「tenbo」さんというお店を構えるデザイナーの鶴田さんの作品で、地球の絵を施した衣装なんですが、その衣装は様々なことを超越しているんです。私たちのYouTubeチャンネルもイスラエル、ハンガリー、カナダ、アメリカ、イギリス、フィンランド、中国、韓国、オーストラリアなど、本当に様々な国の方々が観はじめてくださっています。こうやって広がっているなら、ロシアは帰る場所のひとつではありますが、日本とロシアの二か国にこだわりすぎる必要はもう無い。それが出来たら、もう一歩成長できる気がしています。
その「tenbo」さん・鶴田さんを紹介してくださったのも中川奈美さん。彼女自身本当に様々な方々と繋がっていて、出会う先々で人を繋げていくことを大切にしている方なんです。出会った方に、自分が知っている人をどう紹介したら皆の輪が大きくなっていくかをずっと考えている。その様子を間近で見て、感化されているのかもしれません。同じようには出来ないけれど、自分も繋げてもらっている中の一人として、小さな輪でもお返ししていけるようにと思っています。
Tintのオンライン発表会第一回エントリーも、そうした繋がりや巡りあわせのメンバーで一緒に取り組みました。MV「秋とは」にも出演してくれたタップダンサーyoshikoさんは、撮影の1ヶ月前に三軒茶屋のミュージックバーでたまたま知り合ってナンパしました(笑)。その時は一緒に即興のセッションをして、「じゃあまたどこかで会いましょう」と話して別れました。その後すぐ、Tint主催のオンライン発表会の話を聞いて、コンセプトである「初めて」を、まったく違うことに初めて挑戦するのではなく、そのメンバーでやること自体が初めてという解釈ではどうかと考え、お声がけしたんです!撮影はとても楽しかったですね。オリジナルの短い動画でしたが、思ったよりYouTubeでも観て頂けて嬉しかった。私は完全なゼロから自分自身で何かを作ることが苦手なので、皆がいて乗っかる形で取り組めたのも良かったですね!
本当に、何をするにも一人では出来ません。例えばパフォーマンスでステージに立っているのは私一人かもしれないけど、マイクだって勝手に音は出ないし、照明は誰かが照らしてくれているわけだし、そもそも観てくれる人がいないと成立しない。ユニット結成の流れもそうですが、本当に樹形図のように今までやってきたことや出会ってきた人との関係が続いてきた結果、今この場所にいさせてもらえてるんだなと感じています。
菅原奈月にとって、「パフォーマンス」とは?
全てに繋がっているから、「人生」と言えるかもしれません。細く長く続いているもの。これからも表現の方法はさまざまに変わるかもしれないけれど、人を繋ぐ要素や、人と出会う機会などは変わらず続いていくと思うので、やっぱり「人生」なんでしょうね。インタビュアーコメント
インタビューの中でも様々な方のお名前が登場した奈月さん。人との出会いを大切にし、一度で終わらせず繋げ続けているからこそ、新しいことに挑戦する環境が自ずと生まれているのかもしれません。「いちごたぬき」は改名だけでなく、様々な展開を予定しているのだとか。今後の活動が楽しみです!
(Interview&Text:Shiho Nagashima)
菅原奈月 Tint Room
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