【TINTインタビュー】大田悠介(ラテ職人)さん

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コーヒーが飲めない大学生から世界的バリスタへ

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ーよろしくお願いします。はじめに、大田さんがバリスタになった経緯についてお聞き出来ればと思います。

大学生の頃、あるコーヒーチェーン店でアルバイトをしていたのですが、​セミオートマニュアルエスプレッソマシンのお店だったんです。
当時そのコーヒーチェーンの中で​全国的にも2-3割しか​セミオートのエスプレッソマシンは導入されてなくて、とてもレアでした

実は当時自分はコーヒーを飲めなくて、「豆の違いって、何が違うの?」という状態。

そこから少しづつ興味を持って調べていく中で、バリスタという職業を知りました。
本当は禁止だったのですが、「お客様に喜んでもらうため」と言い張って、お店でこっそりラテアートを描いたカフェラテを​お客様に提供していました(笑)。

セミオートのエスプレッソマシンが職場にあるので、ラテアートが一番身近だったんです。
そうしてどんどんエスプレッソマシンを触るのが面白くなっていって、有名店をまわって観察してみたり、本を読んで勉強したりしはじめました。

ー今のお店(DOWNSTAIRS COFFEE)には、どのような流れで参加することになったのですか?

2011年のオープンの頃から働いています。
当時は今ほどコーヒーがブームではなくて、美味しいお店も少なく、働ける場所も少なかった。
当初は個人店で働いていたのですが、バリスタとして自分がやりたいことをやろうする度に、理想と現実のギャップにぶちあたっていました。
この仕事は一見華やかに見えるかもしれませんが、飲食なので体育会系で、上下関係も厳しく、「背中で覚える」職人文化が強いお店も多かったです。
個人店ではオーナーのこだわりの強さに合わせきれなかったこともありました。
この先どうしようかと悩んでいた時に、友人がDOWNSTAIRS COFFEEの求人を見つけて教えてくれたんです。
それで応募し、合格して現在に至ります。

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ラテアートは自己表現、そしてお客様とのコミュニケーション

ー大田さん自身のコーヒーへのこだわりはありますか?

こだわりはあるようで無いかもしれません。
海外はその時々で流行りのものを出すのが主流ですが、​日本では浅煎り〜深入りの様々な焙煎度合いのコーヒー豆を取り扱ってるお店が多く、お店での提供スタイルもマシンを使ったエスプレッソ系、ドリップ、エアロプレス、サイフォンなど抽出器具も多種多様で幅広い。
ですが私の好みとしては、カフェラテなどのミルクに合わせるなら中煎り〜中深以上のもの。程よく苦味もあってミルクと合わせた時にビターチョコレートかミルクチョコレート のような感じのものが好きです。
ラテは深くてもいいけれど、ドリップの場合は中煎りぐらいのバランスが取れたものが好きです。
抽出器具や飲み方によって色々変えてますね。 

ーラテアートで大切にしているのはどのようなポイントですか?

ラテは注ぎ方によっても見た目の質感や味わい方も全然変わってきます。
注ぎ方でエスプレッソとスチームミルクとよく混ぜ合わせたら最初の一口目から柔らかく優しい味になるし、​逆 にエスプレッソの泡(クレマ)を残すようにするとエスプレッソの苦みが先に来るなど、使っているものが少ない分少しの違いで味や見た目の質感などもすごく変わるので、いつもと同じ味、同じアートになる様な技術も大事ですが、私はお客様に合わせることが多いですね。
お客様と話している中で「今日は濃いめがいいんだよね」と分かれば、注ぎ方を変えたり、エスプレッソやミルクも質や量を変えたりします。
一方でラテアートの見た目が好きで来ている方もいるので、その場合は見た目を重視する。
お客さんそれぞれの求めるものに合わせてあげるんです。

ーなるほど。お客さんとのコミュニケーションがあって出来上がるものなんですね。

DOWNSTAIRS COFFEEのお客様の半分以上は常連さんなので、それぞれの好みに合わせて作っています。
お客様には「ラテを飲みに来ている」人も、「人に会いに来ている」人も、「習慣で来ている」人もいる。
それぞれの人が求めているものを覚えて、それに合わせることを大切にしています。
コミュニケーションで出来ている部分が大きいのですが、僕、実はあまりコミュニケーションが得意ではなくて(笑)。
でもカウンターに立つからには、そんなことは言っていられない。カウンターに立ったら、お店に来てくれた人に対してウェルカムな状態を心がけています。

ーラテのアート面でのこだわりやポイントはありますか?

注ぐだけで描く「フリーポア」をメインでやっているのですが、アートの描き方、絵柄のチョイスによっても味が変わるんです。
当初は「選んだアートのせいで、ベストな味が出せない注ぎ方になるのは良くない」と思っていたのですが、最近はお客様に喜んでもらえるなら自分が思うベストじゃなくてもお客様に合わせることも一つの選択肢だと思っています。
もちろん味にはこだわりますが、味以上に見た目で喜んでもらえることもある。
見た目と味の両方で喜んでもらえることがもちろん一番ですが、味だけを考えているとアートの幅が狭くなってしまうんです。

ーラテアートの大会にも何度か出場されていますが、大会と店舗での接客とでは、気持ちや振る舞いは異なりますか?

ラテアートの大会はお店に立っている時とは少し違いますね。
大会で評価されることがそのまま一般の方に評価されるかというとそれはまた違う。

大会に出ていた頃は、自分の表現したいことや自分が描ける最高のアートを、審査基準を無視して出したりしていました。
本来は審査項目やルールの中で競うのですが、それに合わせることが出来なかったんです。
最初の1-2年はその「自分なりのこだわり」にしがみついていて、それが評価されていないことがとにかく不満でした。
​今となっては、大会の審査基準やルールに合わせることが出来なければ評価されないし、もし自分のエゴやこだわりを突き通すならみんなの予想を遥かに超えるびっくりするようなアートを出せなければ評価なんてされないんだという事に途中で気付きました。 

ーそんな中で、2014年にはついにチャンピオンの称号を獲得しましたね。

お金も時間もかけて出続けていたので、当時は正直「もういいかな…」と思っていました。
もうこれを最後にしようと。負けず嫌いなので、もし負けていたら翌年も挑戦していたかもしれませんが(笑)。
それでも出続けていたことで、大会で評価されるアートをしっかり押さえて、その上で自分のこだわるアートもやれるようになっていました。
大会に合わせられていなかったら、優勝していなかったと思います。
何度も出場していたからこそ、応援してくれるバリスタの友人も出来て、全体を巻き込めたのかなと。
​あとは運が良かったと思っています。実力だけでなく色んなことが重なって優勝することが出来たと思います。 

でも今こうして客観的に見ると色々言えますけど、当時は必死で、周りが見えていませんでした。
勝ちたい気持ちと、自分がやりたいことの狭間でずっと揺らいでいましたね。

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Tint Roomでの挑戦で広がった「世界チャンピオン」の価値

ー現在はTint Roomを経由して、どのようなお仕事をされていますか?

加賀見さんに企画してもらってワークショップをやったり、出張でコーヒーを入れたりしています。
ワークショップは​家庭用のマシンを使ったワークショップだったので、当初「自分じゃなくても出来るのに…」と思っていました。
でも、世界チャンピオンという肩書を持っているのは自分だけ。だとしたら、人とは違うことが出来るのかもしれないと思うようになったんです。
やっぱり自分にしか出来ないことをしたいですよね。
参加してくれた人にとっても、
世界チャンピオンが教えに来てくれた体験
なら記憶に残るかもしれない。
そう考えると、ワークショップで体験してもらうこともとても大切だと思うようになりました。

ーTint Room、そして加賀見さんとの出会いはどのようなものだったのでしょう?

チャンピオンになった頃に、人づてで加賀見さんと知り合いました。
正直、当時はサービスも立ち上がったばかりで​まだ少し内容などが見えない感じだったので、警戒していたんです(笑)。
そこから一気に動かしてくれたものの、初めての仕事のイベント出店で、最初のディスカッションからぶつかってしまって。
「一人でも多くの人に見てもらうためには普通ではだめ」
「人をあっと言わせることをしなきゃだめ」

ということで
「ダンスパフォーマンスをしながらラテアートを作る」
というのがその時の企画。
Tint Roomが用意したダンスの先生にレッスンを受けることになったんですが、僕は最初の1回しか参加せず、その後は加賀見さんが代わりに残りのレッスンを受けていました(笑)。

ワークショップも家庭用マシンを使った物だったりしたので最初は「やりたくない!」と反発して、加賀見さんとたくさん喧嘩しましたね(笑)。
チャンピオンになった直後はとにかくツンツンしていました。
でも、やってみないと出来るのか出来ないのかわからないこともある。
可能性を広げられるなら、​どんなことでも一度はチャレンジしてみるのもありかなと思えるようになってきました。
自分のこだわりは大切だけど、こだわりすぎていると誰にも受け入れられない。
相手がいるからこそ、僕たちは必要とされる存在になれるんです。
本当に、あんなにぶつかったのによく見捨てないでいてくれてるなと思います(笑)。

ーありがとうございます。最後に、Tint Roomや大田さん自身のこれからについて教えてください。

Tint Roomを通じて、自分の領域外の体験をさせてもらえるのは面白いですよね。
それがあるから、自分の世界が小さいことに気づける。
その世界を少しづつ大きくしていくと、世の中から見たらちっぽけな自分にも気づかされるし、だからこそラテアート世界チャンピオンという自分自身の価値も改めて感じています。
クリエイターなど個人でやっている人は、こだわりが強い。それは長所でもありますが、少しでもはみ出して崩していけるといいなと思っています。

僕でいうと、これからは写真もやりたいと思っています。
今は趣味で好きなものを撮っているだけなのですが、幅広く撮っていきたい。
コーヒーとの掛け算で、写真展を開催してそこでコーヒーを提供することもできますよね。
そういうことを考えていると楽しくなってきます(笑)。
ライカのカメラを趣味でやっている人たちに誘われていて、今年コーヒーとカフェに関連した写真展を開催する予定なんです。
7月に企画していて出来ればそこで自分が淹れるコーヒーも提供したいですね。

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インタビュアーコメント

「ラテアートの世界チャンピオン」という肩書がありながら、現在も型にとらわれないラテ職人として店舗での勤務やワークショップなどで活躍されている大田さん。
「昔はツンツンしていた」といいますが、ラテアートの作り方やその提供における姿勢の変化に、パフォーマーとしての成長と更なる活躍の可能性を感じて頂けたのではないでしょうか。是非、大田さんへのご依頼をお待ちしております!
(Interview&Text:Shiho Nagashima)

大田悠介 Tint Room

大田悠介TintRoom
コメント (2件)
  • Hisamitsu
    Posted at 08:19h, 13 7月 返信

    コーヒが飲めなかったところからスタートだったのですね!とても面白く読ませていただきました。いつか大田さんのラテを飲みに行かせていただきます。

    • tintroom
      Posted at 20:59h, 24 7月 返信

      Hisamitsu様 インタビュー記事を読んでいただきありがとうございます^^ 是非、大田バリスタに会いに六本木に来てください! もしくはイベントでお近くに行った際は何卒よろしくお願いいたします!

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