【Three Primaries】Vol.14 パフォーマー 錬吾(RENGO ) さん

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【THREE PRIMARIES】VOL.14 パフォーマー 錬吾(RENGO ) さん

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「Tint」とは「淡く染める」こと。でもそれは、パフォーマー自身が持つ色彩に重ねてこそのものです。【Three Primaries】は、TintRoomのパフォーマー自身が持つ三原色=「心(Mind)・技(Skill)・体(Competency)」に迫る、Tintインタビューシリーズ。第14回は、ダブルダッチを取り入れたアクロバットパフォーマンスが人気のパフォーマーRENGOさんにお話を聞きました!

RENGOの「心」:

めぐりめぐってやっと掴んだ“スポーツ”で生きる道



子供の頃からスポーツが好きで、将来もスポーツの道に進もうと思っていました。だけど、やんちゃだったせいで中学校は全寮制の学校、しかも農業系のところに入れられてしまって。昼間は学校に通い、寮に戻ったらひたすら農作業をして…という生活で、当然ながら部活にも入ることができませんでした。

そんな中学時代にとあるイベントで初めて見たブレイクダンスに、「何だあれ!やってみたい!」と衝撃を受けたんです。そこからYouTubeで調べるようになり、学校や農作業の合間をぬって隠れてひたすら練習しました。畳の部屋だったので腰を擦ったりして痛かったけど、怪我をしてでもやりたかったんです。

なぜなら、僕はスポーツをやりたかったのにやらせてもらえなかったから。だからこれだけは譲れなかったんです。ブレイクダンスまで奪われたら生きがいがなくなると思い、隠れて必死に練習して、そこそこ出来るまでに上達しました。

でもまたそこで進路の問題。高校はダンスの専門学校に行きたかったので寮長や両親と話し合いをしたものの、リズム感もないし向いていない、それでもダンスをやりたいなら自分でお金を稼いで通えと言われてしまい…さすがに無理だろうと諦めざるをえませんでした。

そうして高校でも系列の畜産系の寮に住み、通信制の学校に通うことになり、ダンスへの情熱は中学ほどではなくなっていました。それらすべてを取り返すために進学したのが、日本体育大学(日体大)です。

日体大には全国大会で優秀な戦績を残しているような人がたくさんいたので、今から勝負するために新しいスポーツを探したんです。そこで見つけたのがダブルダッチ。日体大で一番強く世界大会を7連覇するほどの実力があったこと、そしてロープの中では何をやってもOKで、ブレイクダンスの経験が活かせることも魅力的でした。

ダブルダッチでは、皆アメリカ・ニューヨークのアポロシアターで開催される世界大会での優勝を目標にしています。大学時代、他の大会では優勝できたものの、目標だった世界大会に行けなかったことが僕にとっては不完全燃焼で、就職に向けて動けずにいました。

そうして就職せずにアルバイト生活を送っていた時に、海外でダブルダッチの路上パフォーマンスをしている先輩に「チームに入らないか」と誘われたんです。協調性がなくチームプレイに何度も挫折してきたし、路上でやるイメージも浮かばなかったものの、彼らのパフォーマンスを見に行ったらものすごく盛り上がっていて。そこで思ったんです。そもそも、僕のパフォーマンスの始まりであるブレイクダンスって駅前で練習する文化があるのに、当時は隠れてやっていたのでその経験ができなかった。それが今できるかもしれない、やってみたい、路上に立ってみたい、と。そうしてチームに加入することになったのが、僕の大道芸人人生の始まりです。

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RENGOの「技」:

現状やこだわりに固執せず、視野広く挑戦しつづける



路上パフォーマンスは本当にゼロからの挑戦でした。これまでのパフォーマンスは「ダブルダッチを好きな人が見にくる大会」で行っていたので、ある意味仲間同士で盛り上げるようなもの。でも路上パフォーマンスは、まったく知らない人に楽しんでもらえるように考えてやらないといけません。難しいお題ですが、どうやら僕はそういうお題に挑戦すること、挑戦してうまく行かせる過程が好きなようで、どんどんハマっていきました。

最初は「凄い技をやればいいんでしょ?」と思っていたんです。凄い技を見せれば皆盛り上がるだろう、と。正直、当初はチームのMC担当がやっていることの意味がわかりませんでした。「僕たちが凄い技をやっているのに、なぜそれを止めてまで彼はしゃべるんだろう?」そう思っていて、パフォーマンス後の反省会でも彼に強く詰め寄ったり、口論になることもありました。

それでも徐々に、彼がやっていることの意味が気になってきたんです。それを知りたくて、自分も一人でやってみようと思い独立しました。独立したての頃はやっぱり「しゃべりなんていらない!技を見せよう」というスタンスだったのが、それでは思うような反応を得られない場面が徐々に増えてきて。そうしてやっと、MCの彼がやっていたことの意味に気づくことができたんです。「パフォーマンスって、コミュニケーションなんだな」と。

だから今は、自分の人間性を出すことを意識しています。お客さんとコミュニケーションをとっていくためのツールとして、パフォーマンスがあるようなイメージ。「初めまして」から会話をしていく中に、パフォーマンスが組み込まれているような感覚です。

独立した理由はもう一つあって、やっぱり自分で何かを成し遂げたかったから。現状に満足せずに上を目指し、知らないことを吸収していきたいというのが、常に僕のモチベーションなんです。

そのために、自分のこだわりに固執して視野が狭くならないようにしています。例えば、僕の技はアクロバット、ブレイクダンス、フリースタイルバスケなど、いわゆる「今時の若者のパフォーマンス」がメイン。でも大道芸には、ジャグリングや中国ゴマなどさまざまな技があります。正直僕も最初は、それらに対して「なんだかかっこ悪いな」と食わず嫌いをしていました。

だけど、例えば僕はアクロバットをかっこいいと思っているけど、そう思っていない人もいる。自分の「かっこいい」が皆に共通の「かっこいい」とは限りません。それに気づくと俄然いろいろなことに興味が沸き、実際に触れることでその面白さにも気づくことが出来たんです。こだわりも大切ですが、視野を広げることで面白いことっていくらでも増やせるんですよね。

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RENGOの「体」:

次世代や業界の未来を切り開いていくために



僕はいまだにアクロバットやダブルダッチ、大道芸など多数のジャンルをかけ持っていますが、それには二つの理由があります。ひとつは、「ひとつのことを何十年も続けられていない」というコンプレックスがあること。何か一つを極めている人に対しては、たくさんのことを少しづつ併せ持ったマルチプレイヤーとして対抗していくしかありません

もう一つは、皆が「いいな!」と思う対象として、音楽などと比べてパフォーマンスの地位はまだまだ低く感じるから。さらに人によっても好みが異なるので、どれなら面白いと思ってもらえるか、その引き出しをたくさん持っておきたいんです。

パフォーマンスを見てくれる人には、元気を得てもらったり、挫折から立ち直るきっかけなんかになれたらいいなと思っています。どんなに強い人でも落ち込む瞬間はあるはず。嫌なことがあったら、是非僕のパフォーマンスを観て「頑張ってるやつがいるな」って思ってもらえたら嬉しいですね。

自分としては、路上大道芸のアクロバットパフォーマーの中では頂点まで来た感触があります。だからこれからは後輩的な立ち位置ではなく、僕が初めてブレイクダンスを観た時のように、憧れてマネしたいと思われる存在になっていきたい。僕自身も、自分が先輩として次世代のパフォーマーたちに何ができるのかを意識するようになってきました。

実際、路上パフォーマンスにはまだまだたくさんの弊害があり、やっぱり「通報」が大きな壁となっています。通報自体は大切なシステムですが、ミュージシャンや大道芸人がやりやすいように変えていきたい。路上は自分が育ってきた場所でもあるので、そこに次世代が活躍できる場所を作っていきたいんです。

やっぱり、日本と海外ではパフォーマンスの受け止められ方に差を感じます。海外だと「神から与えられた能力」のように受け止められていて、パフォーマーへの尊重もあり、だからこそよりパフォーマンスがどんどん発展しています。でも日本はまだまだそうではない。パフォーマーを「なんか頑張ってるやつ」で終わりにしたくないんです。パフォーマンスの地位をもっとあげて行きたいし、路上をただの「頑張る場所」のようなものにしたくない。僕自身、願わくば50歳になっても路上に立ってパフォーマンスをしているのが理想です。

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RENGOにとって、「パフォーマンス」とは?



人生」です。パフォーマンスに出会わなければ今の自分はないし、出会ったことで今の自分が作られています。だからこそ、僕をみて「自分もああなりたい」と思う人が生まれるように、この先の人生も歩んでいきたいですね。


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インタビュアーコメント

路上という場所への想い、そしてパフォーマンスの持つ可能性を次世代へと繋いでいく意思を強く感じたRENGOさんのインタビュー。挑戦の対象は自身の活躍だけでなく、「パフォーマンスそのものの地位を高める」ことへも広がっていきそうです。是非そんなRENGOさんへのご依頼をお待ちしています!

(Interview&Text:Shiho Nagashima

パフォーマー錬吾 Tint Room

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